最近,スーパーやデパートには,驚くほど様々な塩が置かれています。国産のものだけでなく,フランス,イタリア,中国……と,枚挙にいとまがありません。
その多くは「自然塩」といわれるもの。昨今の健康ブームに合わせ,「ミネラルが多く,身体に良くて美味しい」などのうたい文句で,人気です。
去年から法律が変わり,塩の製造,輸入,卸売りが非常にやりやすくなったため,多くの企業が塩事業を始めました(これも規制緩和ですね)。それで,一挙に種類が増えたと いうわけです。
自然塩が,従来の塩(JT−−日本たばこ産業の「精製塩」)とどう違うかというと, これは,製法の違いと考えていいでしょう。精製塩は,塩化ナトリウム−−いわゆる塩の成分−−以外の成分をできるだけ取り除き,99%以上の純粋な塩化ナトリウムにしたもの。一方,自然塩は,天日乾燥や煮詰めることで,精製塩では取り除かれているニガリと言われる成分などが,ある程度含まれたタイプのものです。ミネラル分が豊富といっても わずかな量なので,自然塩からミネラルを採るというのは,少々難しそうです。
「自然塩」の中には,白ではなく,灰色,あるいは茶色のものがありますが,この色と ミネラル分の有無とはあまり関係ありません。塩田の細かい土の粒子が残っている場合などに,その色が着くことがあるようです。
ところで,現在,日本人の食塩摂取量は1日13.2g(1995年)。目標値の10gをはるかに超えており,年々増える傾向にあります(正確には,目標量は,体重1kgあたり0.15g。つまり,体重50kgの人だと,7.5gです)。「和食は脂肪分の少ないヘルシーな料理」とされていますが,唯一のウイークポイントは塩分が多いことです。意識的に塩の量を減らすことが大切です。
このごろは,塩化ナトリウムに,ハーブや香辛料,昆布,ゴマなどを加えた“塩調味料”も数多く売っています。これは,減塩の強い味方になります。塩の味を他の成分で 補って,塩自体の量を減らそうというわけです。
様々な塩が店頭に並ぶようになった中,「減塩塩」なるものも登場しました。例えば,フィンランドから輸入されている「パンソルト」という商品は,塩化ナトリウム57.6%。 つまり,塩分57.6%の塩なのです。そのほかの成分は何かというと,塩化カリウム(28%),硫酸マグネシウム(12%)など。
そして,アメリカ製の「ライトソルト」に至っては,塩分が50%以下!岩塩が49.5% に,塩化カリウム49.5%,この他リン酸三カルシウムなどが主な成分です。
ただし,減塩塩だからといって,多量に使っては意味がありませんね。
織田麻里